2023年12月31日

宗教法人の責務とは…坊さんが「税」と書いたら

宗教法人の責務とは…坊さんが「税」と書いたら

新年、あけましておめでとうございます。

お寺も納税しています
昨年末、世相を象徴する「今年の漢字」として「税」が揮毫されましたが、
「坊さんなら、「非課税」と書くべきでは」と言った人がいたとか…。
字が表す世相もさることながら、
そんな声が気になって、寺と税金について書きたくなりました。
一般に「宗教関係は非課税」というイメージがありますが、
僧侶の給与には課税されます。宗教法人の責務とは…坊さんが「税」と書いたら

頂いたお布施は宗教法人の収入であり、
そこから給与として生活費を頂いています。
当然ながら年末調整や確定申告をします。

宗教法人に対しての非課税の扱いは、固定資産税、法人税、宗教活動の収入にかかる所得税などです。

非課税であるからには
例えば寺の駐車場。固定資産税はかかりません。
門徒の皆さんがお参りに来ていただくために必要だからです。
そのことを県や市に届け出て、「境内地」の認証を得ます。
申請にあたり、特に県には「何のための駐車場、どのくらい使用する…」と詳細に書く必要があります。結構きびしいのです。

けれども、駐車場経営をして、収入を得たら、
これは宗教活動ではないので、「収益事業」として課税されます。

では、お布施をいただいたら、どのような扱いになるのかというと…。
そのまま僧侶の収入になるのではなく、宗教法人の収入となります。
続いて、一般企業なら、売り上げ(収益)から経費(費用)を差し引いた利益に課税されるわけですが、
宗教法人では課税されません。
それは、本来の目的である宗教活動に用いなければならない、とされているからです。

宗教が「法人」として在る、ということ
一般企業も、利益を出したら、次の仕事のために用いる点は同じですが、
宗教法人は、その使途がふさわしいかどうかが、より一層問われます。
当然ながら、一般企業のように「株主に配当」ということはありません。
「経営の多角化」や「投資」にしても、本来の目的に適っていなければなりません。
宗教法人が掲げる理念に基づいて用いなくてはならない、ということです。

これが、僕の理解する「宗教法人の公益性」です。
税制上や政教分離の正確なところは、専門の資料を参照いただくとして、
宗教法人が非課税扱いであるのは、その理由こそ大切なのです。

「仏法領」の物
「仏法領」という言葉があります。
「仏の教えによって治められる世」ということです
私たちの現実の批判も含む言葉です。
蓮如上人は、廊下に落ちていた紙切れを見て、
「仏法領の物をあだにするかや」といい、両手でひろって、たしなめられた、とされます。
                   (『蓮如上人御一代記聞書』より)
「仏様からいただいた物」、もう少し具体的な言い方をすれば、
仏教が日常生活を離れてあるものではない、ということもありますし、
何事も自分の思いのままにしてよいものはない、ということでもあるでしょう。

蓮如上人の言葉は、ずっと昔のものであり、
近代的な法律や税制でいう「公益性」とは価値基準が異なる時代の言葉ですが、
宗教法人の、本来の「公益性」はここにあると思います。

新年にあたり
今に始まったことではないのですが、
昨年は宗教法人に対しての批判や疑問が強まりました。
批判の出る状況があるわけです。
新年にあたり、あえて宗教法人の理念の話を書きましたが、
僕自身がそれを確かめるために、自分に向かって言っているのです。

本年もよろしくお願いします。

<参考>
国税庁HP 宗教法人の税務
 
文化庁HP 宗教法人運営のガイドブック

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Posted by 明行寺住職 at 14:00│Comments(0)法話
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