2020年04月28日

離れても活きる「つながり」 コロナ対策の「社会的距離」に思う

離れても活きる「つながり」  コロナ対策の「社会的距離」に思う

長野市を含む地域に新型コロナウイルス警戒宣言が出され、
一段と感染リスクの高まりを感じています。
「人との接触機会を極力減らしてください」ということは全国的に呼びかけられていましたが、
長野においてもここへきて特に強調されるようになり、
「社会的距離」という言葉が地元メディアでも言われるようになりました。
スーパーやコンビニののレジの前には、間隔を空けて並ぶために「立ち位置」が表示されました。離れても活きる「つながり」 コロナ対策の「社会的距離」に思う


また、県外からの帰省を控えることや、休校の延長などにより、
広い意味でも人との距離が広がっています。

4月23日の『長野市民新聞』では、
大岡診療所所長の内場廉先生が「新型コロナから命を守るため ?進化の根幹法則を否定”」
とのテーマで「人と離れること」を次の様に語っておられました。
( 『長野市民新聞』「ドクター内場のおかげんは?」)

「…人類をはじめその他多くの生物たちは、自分の命を守るために「群れ」で行動することを進化の中で学んできました。
 ですから、すべての経済活動、人間関係、趣味、文化などほとんどのことは、人と人との交わりの中で発展し進化してきました。
 今、私たちは大きな岐路にいるかもしれません。
 「命を守るために集まる」から「命を守るために人と離れる」ことが求められています。
 生きるために人を遠ざける、人が進化してきた根幹の法則を真っ向から否定する事態です。…」
 
本当にそのとおりだなあ、と感じます。
例えば学校では、これまでなら「友達と仲良くなるように」と言ってきたところを、
「近づきすぎないように」と言わねばならないのは、
先生も生徒も困惑することでしょう。

このような事態に遭遇して、逆に、私たちは「つながり」無しには生きられないことをあらためて感じます。

さて、「つながり」は「縁」という言葉でも表わされます。
そして「縁起」とは仏教の根本の教えです。
縁=つながり、によって成り立つ、
あらゆるものは関係の中で成り立っている、ということです。

「命を守るために集まる」も、そこに含まれることです。
あえて集まろうとしなくても、「つながり」を断ち切っては命を存続できないのです。
ところが、それが「命を守るために人と離れる」とあっては、
一見、「縁起」にも逆らうことのように感じます。

けれども、こんな面もあるのです。

『ロビンソン漂流記』は、船が難破して無人島に漂着し、
そこで一人で生活する物語です。(後には、共に暮らす仲間も登場しますが)
この物語について、どなただったか、このように語っていたことを思い出しました。

「島では一人で生活していたけれども、
 漂着するまでは、社会生活を営んでいたのであって、
 社会の中で学び、身に付けた知識や経験があったからこそ、
 一人で生活できたのだ。
 つながり無しに生きていたということではない」

一時的には「一人になる」、人と離れたわけですが、
それまでの「つながり」が、ずっと活きていたのです。

もう一つ、
これもどなたの言葉か忘れましたが、

「子どもは親の気配を感じてこそ、一人でいることができる」

少し離れたところに親がいて、子どもをちゃんと見ていれば、
子どもは安心して、一人で遊んだりしていられる、ということです。

二つの言葉は、いずれも、今の私たちにとって、大切なヒントとなるように思います。

社会的距離を取り、外出機会を減らし、混雑を無くすことが求められていますが、
それが可能であるためには、「信用」や「安心」といった裏付けが必要です。

しばらくは、一人で過ごさなければならない状況が求められますが、
根本には、相手への信用や、お互いに作り出す安心があってこそ、
感染予防の行動ができるということではないでしょうか。



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Posted by 明行寺住職 at 11:01│Comments(0)法話
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